第2章 夏の話
いつもよりお洒落して、メイクもナチュラルだけどばっちり仕上げて臨んだ合コンは、まぁまぁ盛り上がり、参加者は全員、連絡先の交換をした。
特に気になる人はいなかったけど、1人だけ凄く話しかけてくる人がいた。
彼は温泉on iceをきっかけに勇利のファンになったそうだ。
彼との会話はほとんどが勇利の話だったのできっと彼の目的は勇利なんだと思う。
今回の人はそういうのとは違うとは思うけど、お姉ちゃんは勇利が変な人に襲われないかが心配です。
「ただいまー」
「おかえり、恵利姉ちゃん」
「エリ、どこ行ってたの?今日は一段と可愛いね」
玄関に入るとたまたま食堂から出てきた勇利とヴィクトルにばったり出会ってしまった。
貴方への恋心を断ち切るために合コンに行ってきました、なんて言える訳もないので、当たり障りなくちょっと飲みに、なんてお茶を濁そうとしたのに、受付にいたお姉ちゃんが「合コンどうだったー?」なんて声をかけてくるもんだから「合コンに行ってたみたいだよ」と、勇利に訳されてしまった。
するとヴィクトルの表情が悲愴なものへと変わって
「エリは俺と付き合ってるのにどうして合コンなんて行ったの??」
なんて言ってくるから勇利もお姉ちゃんも、もちろん私も声を揃えて驚いた。
「「「えぇー!?」」」
「いや、なんであんたも驚いてんのよ?」
初耳だからですお姉ちゃん!
「恵利姉ちゃんいつの間にヴィクトルと付き合ってたの?」
そんなの私が知りたい!!
「エリのウワキモノー」
「誰リビングレジェンドに変な日本語教えたの!?待って、待って!現実が受け止めきれない!!!えっと、とりあえずヴィクトル?私達、いつから付き合ってたんだっけ?」
「それ本気で言ってるなら凄いショックなんだけど…」
ジト目で見られても知らないものは知らない。
「えっと、もしかして私が付き合ってほしいって言ったの?」
まさか寝ぼけてうっかり言ってしまったのだろうか、それで忘れてしまってるのかと問えば
「なんで付き合う事をわざわざ確認するの?」
彼は首を傾げ、不機嫌を隠しもしない声音でそう言った。
それを聞いて、うわ、出た文化の違いー。なんて半ば意識を飛ばしていると、私の賢い弟が日本でのお付き合いの仕方をコーチにレクチャーした。