第2章 夏の話
「ひぃ、だめぇええっ、や、め、ぁああんっ」
「ほらほら、声抑えられてないよ」
「んぅうううっ」
感じ過ぎて苦しい。
刺激から逃れたくて体を捩るけど、ヴィクトルはそれを赦してくれない。
何度もイってるのに離してくれなくて、快感が後から後から追いかけてくる。
思考は鈍り、私はただただ彼が早く飽きてくれるように祈った。
声を抑えるために手を噛めば、その痛さに少し気が紛れたのだが、すぐに不機嫌そうなテノールで咎められた。
「エリ、それはダメ」
噛んでいた右手を掴まれ、口から剥がされると、嬌声が漏れた。
「やっ!ふぁあっ」
「手が傷つくし、なにより目立つ、噛むならこっちにしなさい」
そして私はあれだけ忌避していた彼の肩に歯を立ててしまった。
それから程なく、私は大きくのけぞってヴィクトルご待望の潮を噴いた。
それで解放されるかと期待したけど、私が彼の肩を噛んでいたことで体勢的に見れなかったらしく、それを大げさに嘆いて、いつの間に用意していたのか…きっと初めから持っていたであろうタオルを噛ませて、まだ絶頂の余韻が止んでない私を責め立て再度潮を噴いたことで、やっとマッサージ器による地獄は終わった。
初めからタオルを使わせてくれればよかったのにこの男は!!
「ふふ、びしょびしょだ。おもらししたみたいだねぇ〜」
にこにこと嬉しそうに私の下肢を覗いている男の姿を見たくなくて手で顔を覆っていると、彼は今度は腰を掴み、膣に指を挿し込んできて
「エリだげ気持ちよくなるのはずるいと思わない?」
と、耳元で囁いた。
もう色々とシリアスにも疲れた私は、こういうとき、なんていうんだっけ、ほら有名なやつ。
思考を巡らせて、思いついた言葉を呟いた。
「嘘だと言ってよバーニィ」
現実を受け止めきれなくなった私をきっと誰も責めやしない。
「…バーニィって、誰?」
この男以外はの話だけれど。
「信じられないよ、ベッドで他の男の名前を出すなんて」
おっしゃる通りです。でも違うんです。
これはなんというか、その、そういうネタで…いや、なんでそんなネタを口走ったかと問われたら困るんだけど、だって私、心も体も疲れてたんだもの。
少しくらい現実から逃げただけで怒らないでよ。