第1章 再会の裏話
それから、私の生活は昼はバイト、夜はお店、の状態になった。
私が手伝い始めてから、明らかに木兎さんの来る回数が増えたらしい。
私が冷たくしても、かおるさんが上手くフォローしてくれるから、扱いも楽だ。
2人は、とても相性がよく見える。
木兎さんは、告白されたら気になる単純タイプだと思うけど、最大の障害が自分だという大問題がある。
だから、告白を勧める事も出来ない。
どうしたものか、迷いながらカウンターの中で作業をしていた、ある日。
「りらちゃんは、好きな人とかいないの?」
客もいなくて、暇になったのか雑談のように話しかけられた。
「…私の事より、木兎さんに告白する事でも考えたらどうですか。」
答えきれなくて、ずっと思っていた事を言ってしまった。
「りらちゃんは、そんな美人なんだから、フラれた事なんてないだろうね。」
口をキツく閉じても遅く、嫌味のような言葉が返ってくる。
確かに、フラれた事はない。
それは、告白した事がないから。
告白してフラれた後悔と、告白せず離れた後悔と、どっちがマシなんだろうか。
「かおるさんは、伝えられずに離れてしまった事、ありますか。」
少なくとも、今の私は後悔ばかりしている。
せめて、伝えれば良かったと今は思っている。
思っていた以上に冷たい声が出て。
「すみません。今日は帰ります。」
八つ当たりをしてしまった事が申し訳なくて、店から飛び出した。