第1章 再会の裏話
木兎さんに呼ばれてきた事。
このお店を閉めると聞いた事。
私が職人を目指していて、和食を扱っていたから手伝えないか頼まれた事。
初めは、断ろうと思っていた事も話した。
考え直したのは、このツケ場に入ってから。
大切にされてきた道具達を見ていたら、手伝いたくなって。
‘手伝い’だから、給料はいらない。
私は、家賃どころか水道光熱費まで取らない家に住んでるお陰で、お金には困っていないから。
勿論、決めるのは彼女だから、押し付けないように気を付けて話したつもりだ。
「有難う。じゃあ、母さんが戻れるようになるまで、お願いして良い?」
全部を聞いて、彼女は嬉しそうに笑っていた。
それは、木兎さんの紹介だから断れない、という感じではない。
迷ったり、戸惑ったり、していないようだったから。
この人は、出会って数分の私の言葉を信じてくれたのだと思う。
とても純粋で、真っ直ぐな人だ。
信用すると決めたら、最後まで信じてくれる。
出来れば、この人を傷付けたくないと、本気で思った。