第6章 ご紹介します
あんまり、空気が悪いようには感じない。
だけど、喧嘩しないって言ったのに言い合いなんかしていたから、止めたくてわざと笑った。
私のご機嫌には2人とも敏感なようで、黙ってくれたは良かったものの…。
食事を開始する挨拶以外、会話がなくなってしまった。
喋るな、と言ったつもりはないのに。
黙々と食事を続けるのは、料理が不味いのかと疑ってしまう。
会話のきっかけ、私でも作れるだろうか。
この2人の相性は宜しくないようだけど。
ある意味で、よく似た2人で。
私のやりたい事を汲み取ってくれる人達だから、何か言ってみようか。
「…黒尾さん。ご紹介します。お付き合いさせて頂いている、木葉さんです。」
思い付いたのは、これだった。
おニィちゃんに紹介しなさい、なんて、ふざけた事を言われていたし。
今更だけど、それにノってみる事にする。
箸を置いて、木葉さんを手の平で示すと、2人とも一瞬だけ止まって。
「…何で、今ソレだよ!紹介されんでも、さっきのやり取りで分かってるっつの!」
「言うな、黒尾。熊野が天然なのは、今に始まった事じゃねぇだろ?」
2人して、笑い始めた。
そうか。
今の発言も天然か。
やっぱり、普通とは感覚がズレている事を知った。