第6章 ご紹介します
やっぱり、この2人は相性が悪いらしい。
リビングから出た途端に聞こえてきた声は、明らかに言い争っていた。
巻き込まれるのは嫌だけど、話の内容からして黒尾さんが、私の彼氏イコール木葉さん、を信じていないようで。
確かに、名前は出さなかった私にも落ち度があるからその場に近付く。
「黒尾さん。」
黒尾さんの後ろから声を掛けると、勢い良く振り返って背中で木葉さんを隠そうとしている。
「りら、部屋に入ってろ。」
「彼氏の出迎え、してはいけない理由が分かりません。」
命令のように言われたけど、首を振って拒否を示した。
頭の良い黒尾さんの事だから、深く説明しなくてもこの言い方で、木葉さんが彼氏であると分かってくれるだろう。
「…マジで?」
「マジです。」
「だから、さっきから、そう言ってんだろ。」
少しだけ間はあったけど、理解してくれたようだ。
何故か固まってしまった黒尾さんを避けて、木葉さんが家に上がってくる。
「お帰りなさい、木葉さん。お疲れ様です。」
「タダイマ、熊野。」
木葉さんの望んでいる、家族のような関係の挨拶を交わして、動かない黒尾さんを放ったまま、リビングへ向かって並んで歩いた。