第22章 2人だけで
「…って、訳で。引っ越す事に決まりました。まだ、新居も見付かってないけどね。」
3回目であるこのパターン。
月島くんとりんさんの話は、毎回何故か私に事後報告される。
今回は、宮城から帰ってきたその足で、わざわざ私の住む家にやってきての報告である。
少し遅れた新年の挨拶。
その後の、これ。
意味は分からないけど、過去2回の報告の時と違って、りんさんが幸せそうだから良しとしようか。
「ゴチソウサマ。」
「惚気てないわよ。」
今のが惚気じゃなきゃ、なんなんだ。
そう思っても、突っ込む気力はない。
「幸せそうですね。」
かと言って、話を切り替える能力もない。
だから、感じたまま言葉にした。
「幸せだからね。これから、2人だけで過ごす為の空間を2人で探す。今から、2人の未来を創れるんだから。」
人は、幸せボケになると、こんな風な詩的な事を言い出すのだろうか。
聞いているこちらが恥ずかしくて、頭を抱える。
「りんさんが、キモチワルイ事言うから、りらが耳塞いでるよ。」
こっちの会話の最中で、月島くんが入ってくるのも、今までのパターンと一緒だな。
いや、少し違うか。
私と月島くんが普通に会話をしちゃって、りんさんに嫌がられたのが、今まで、だ。
今からは、この2人の未来を、2人が、2人だけで築いていく。
そこに、私が入っていく事は出来ない。
家族のような存在が減っていくのを感じて、祝いたい気持ちが強いのに、淋しいとも思っていた。