第22章 2人だけで
‐りんside‐
私がこの家を買ったのは当時付き合っていた彼氏…黒尾と暮らしたかったから。
それを思い出した瞬間から、蛍くんが可愛く見えて仕方がない。
いつも、傷付く嫌味をズケズケと言ってくるような、乙女心も分からないような男が、過去に嫉妬してるなんて。
嬉しすぎて、勝手に笑いが込み上げてきた。
「…いつまで笑ってるつもり?」
止まらない笑いを抑えるように、口元を隠してみるけど止まらず。
ついに、怒らせてしまったみたいだ。
低い声が、彼の機嫌を物語っている。
途端に背筋を冷たい空気が這った気がして、笑いは急激に止まった。
「…で、僕に一緒に暮らす意思があるなら、どうでもよくない悩みがあったんじゃないの?」
蛍くんの顔は、明らかな愛想笑いをしていて。
今度こそ無言は許さない雰囲気を醸し出している。
「…その、明日からの宮城に行くって話なんだけど。結婚の挨拶のつもりだって分かってるんだけど、さ…。
私の方が年上だとか、前職がキャバクラとか、父は死別だけど、母とも疎遠だったりとか…。反対される要素ありすぎて…怖かったんだよ、ね。」
だから気に入られる方法が分からなくて、悩んでた。
こんなの相談したところで、人を小バカにした顔をして、自分で考えたらって言いそうな人だから、今まで言えなかった。
まぁ、ここまで拗れてから言っても結果は同じ。
蛍くんは、予想通りの人をバカにした顔をしていた。