第21章 企み秘めたる結婚式
‐きとりside‐
クロの纏う空気が冷たい。
私を見てる眼も、冷たい。
男を気軽に連れ込むような、貞操観念の薄い人間に見られたんだろうか。
こんなに歳も違う男でも、良いと思われたんだろうか。
それで、怒っているなら、さっさと別にそういう関係の人じゃないと話せば良いだけ。
「…おっちゃん、タダイマ。準備出来てる?」
クロに直接話しても信用して貰えない気がして、家に居たおっちゃんに声を掛ける。
会話の内容で、友人くらいの人だと分かって欲しい。
「おぅよ!バッチリ!」
すぐにあった返答。
クロはまだ怪しんでるみたいで、視線だけをおっちゃんに向けた。
睨まれてるというのに、おっちゃんはカラカラと大笑いして。
「なんだ?きとりちゃん、大事な人のお祝いっつーのは、コレだったか?」
親指を立てた、所謂男を表すハンドサインを送ってくる。
「後は若いモンだけで、ごゆっくりー。」
おっちゃんが、こっちに近寄って来たと思えば、靴を履いて家から出ていった。
扉の閉まる音が、静まった空間に響く。
続いて聞こえてきたのは、溜め息を吐く音。
「センパイ、今の誰だよ?」
クロの冷たい空気は消えたけど、状況を把握しようとしているのか、じっと私を見る眼は怖いままだ。
「漁師のおっちゃん。ほら、前に赤葦がこっち来た時さ、船から船に跳んだ話しなかった?
その時、協力してくれた人。」
「それが、何でセンパイの家に居るワケ?」
「それは…。」
言葉で説明するより、見せた方が早い。
クロの手を引いて奥の部屋に連れていった。