第21章 企み秘めたる結婚式
‐黒尾side‐
あの後、赤葦達が着替えてきたら飲みだとか、木兎が煩かったが。
昼から飲む趣味はないって月島達は断り。
りらも、振り袖のまま行動するのを嫌がって断り…。
更には戻ってきた赤葦達も、両家の親と食事らしく、結局は全員別行動。
つまり、センパイと2人きり。
この人、祝うべき赤葦達の手前、了解したフリしただけだろ。
簡単に元カレを家に泊める程、危機管理甘い人じゃねぇ筈だ。
…と、思ってたんだが。
「クロ、荷物はホテル?一回、取りに戻ったら?
うちの住所教えるから、タクシーか何かで来なさいよ。」
「…は?センパイ、マジで泊まっていいワケ?」
「クロと何かある訳ないしね。アンタも、家族みたいな私相手に欲情しないでしょ。」
センパイの中での俺は、すでに男として見られていない現実を知った。
だから、俺が結婚するまで家族ごっこするつもりな訳だ。
自分が相手になる気は、欠片もない。
この調子じゃ、30歳の約束を覚えてるかも怪しいもんだ。
どうせ、こっちに来るなら、センパイと直接話せる機会を狙ってはいた。
この人の中で、今の俺はどんな存在なのか知りたかった。
そんで、期待してた。
俺は特別だって、言ってくれると、思っていた。
知ってしまった現実は、腹の中にどす黒い何かを落として。
やってはいけない事が、頭の中を過ってしまった。