第21章 企み秘めたる結婚式
‐きとりside‐
一瞬。
クロの眼が、ゾッとするような光を放った気がする。
「…じゃ、後でセンパイん家、行かせて貰うわ。」
その上、返された言葉に付属されたのは、何考えてるか分からない笑顔で。
腹の内にあるものを隠す時のものだと知っているから、離れるように自然と一歩引いた。
「センパイが、俺とは何もねぇって言ったんだろ?何で逃げてんだよ?」
空けた隙間以上に詰めてくる、クロの一歩。
眼には、さっきと同じ鋭い光。
完全に、獲物を見ている獣の眼。
「別に逃げてないわよ。ほら、早くホテル戻ったら?」
これ以上引いたら、確実に狩られる。
向こうから離れてくれるように、口だけ動かしたのだけど、腕を掴まれた。
「センパイも行こうぜ?別行動する意味なくね?」
「後でうちに来るって言わなかった?」
「センパイと解散するとは、言ってませんー。一緒に居たって、後で家行くのには違いねぇだろ?」
後で来るのは了解しちゃっているから、今だけでも離れようと試みたけど、あっさり言いくるめられる。
そのまま、腕を引かれては従うしかなかった。