第21章 企み秘めたる結婚式
叩かれたのが分かっている。
でも、何故なんだ。
私が、親と上手くいってないのを、知っている筈なのに。
「イイ歳して、反抗期拗らせ過ぎなんだよ、アンタは!たまには、親に甘えろ!親の好意をちゃんと受け入れろ!
孝行したい時には、親は居なくなってるもんなんだからね!」
叩き返すのは出来ないから、言葉で返そうと開き掛けた口は、すぐに閉じる事になった。
もう、何をしてやりたくても、甘えたくても、その相手が、親が居ないきとりちゃん。
彼女には、言わせちゃいけない台詞を、言わせてしまったから。
「アンタみたいに、親に頼られて、家に尽くしてきた人間の親孝行は、甘えてやる事だ。分かったら、さっさと着る!」
言うだけ言って、きとりちゃんは部屋から出ていく。
残されたのは、私と、化粧をしてくれた女性と、振り袖。
親孝行したいと思える程、親には感謝をしていない。
だけど、孝行したい相手はいる。
姉として我慢して生き続けた私を、想い続けてくれた人。
私から頼るのが苦手な質を知って、自分が独りになる決断をしてまで、居場所を作ってくれた人。
「すみません。着付けを手伝って頂けますか。」
その人に恩返しが出来るとするなら、親の好意を受け入れた所を見せる事。
それしか、無いと思った。