第21章 企み秘めたる結婚式
誰も袖を通していない着物。
そんなもの、貸してくれるものなのか。
「…誰のなの。」
「りらの。」
疑問を解決しないと着られない。
問い掛けに返った答えには、驚くしかなかった。
「アンタが、成人式の時くらい帰ってくるだろうって、用意してたんだって。」
しつけ糸を外しながら、きとりちゃんの話は続いて。
「りらの成人式の時って、家族と和解した頃じゃなかった?だから、オジさんも、オバさんも、相当張り切ってたらしいよ。
どうあっても、りらは一番最初の娘だから。アンタから何も言ってこなくても、親として、してやりたかったんじゃない?
りらが自分から、何かを要求出来ない事を、一番知ってるのも、親なんだよ。」
聞きたくない、知りたくない、親の想い。
ちゃんと愛されてたなんて、分かりたくない。
だって、私は、きっと。
少しの事で、親を、血の繋がった家族を、信じなくなる。
家族のような他人の事は、何があっても信じきれる自信があるのに、だ。
受け取る訳にはいかなくなって、駄々を捏ねる子どものように頭を横に振り続ける。
それを止めたのは、パンッと言う乾いた音と、頬に走った痛みだった。