第21章 企み秘めたる結婚式
翌朝、予定より早くホテルから出る。
本来なら、バスを貸し切りで出してくれているから、私もそれに乗るつもりだったけど、寄らなきゃいけない場所が出来たからだ。
秋紀は、事情を説明する為に、皆と行動して貰う事にして、1人タクシーできとりちゃんの家に向かった。
辿り着いた家の前できとりちゃんは待ってくれていて。
急かすように私を中に連れて入った。
通された部屋、すぐに目に入ったのは…。
振り袖、だった。
その傍には見知らぬ女性が居て、目の前に座るよう促される。
意味が分からないから固まっていると、きとりちゃんに肩を押されて強制的に着席させられた。
呆気に取られている内に、化粧をされて、髪もセットされて…。
あれよあれよと言う間に、頭だけ準備が整う。
そんな私に、きとりちゃんが手で示したのは、振り袖。
「りら、アンタはアレ着なさい。未婚の姉だったら、振り袖が礼装でしょ。」
やっぱりか、とだけ思った。
着物は動きにくいから苦手だけど、多分他を用意する時間はない。
諦めて着ようとおもったのだけど、振り袖にはしつけ糸が付いたままで。
仕立てられたばかりの物に見えたから、戸惑った。