第20章 やっぱり派手なのがお好き
「私と蛍くんが先に来たのは、色々準備があったからなのよね。」
木兎さんのプロポーズ直後、かおるさんの返事前の数秒。
その間に、何やら嫌な予感のする言葉がりんさんの口から発された。
色々って、何。
花火の円を作っただけでは無さそうだ。
その証拠に、りんさんの視線は、こんなコテージには置いてなさそうな物に向いていた。
衝撃吸収用のマットが壁際に立て掛けてある。
確か、月島くんの車のキャリアに積まれていたものだ。
自家用車だけど、仕事にも使ってるのかと思って、気にしていなかったけど。
ここに、わざわざ置いているという事は何かに使う気に違いない。
嫌な予感の的中を告げるかのように、黒尾さんと赤葦さんがそれを移動させて窓の下に設置する。
かおるさんが返事をしている声が聞こえているけど、内容を気にしている場合じゃ無くなった。
マットに木兎さんが駆け寄って飛び乗る。
その、直後…。
文字通り、かおるさんが降ってきた。
上半身が下になっている、かなり危ない体勢で落ちてきたのだけど。
木兎さんは、難なくかおるさんを受け止めて、マットの中に沈む。
「…え、えっ?なに、これ?私、無事なの?」
「無事に決まってんだろ?俺が受け止めてんだぜ?」
「…光太郎ーっ!」
最初こそ、驚きの方が勝っていたのか周りをキョロキョロと見ていたかおるさん。
現実が分かると、泣き出して木兎さんに抱き着いていた。