第18章 only one
「…って、訳で。何故か結婚する事になっちゃいました。」
とても、既視感のある光景が、目の前に広がっている。
付き合う事を報告された時と同じで、りんさんは浮かない顔をしていた。
「おめでとう、ございます?」
「なんで、言葉尻を上げるのよ?」
「りんさん、あまり幸せじゃなさそうなので。」
この辺のやり取りも、前と同じだ。
次の言葉まで、予想出来てしまう、今の展開に意味があるんだろうか。
「1番じゃないって、分かってるのに…」
「好きを基準にして、1番が誰か聞きましたか。」
思った通りの言葉が聞こえてきたから、それを遮る。
私が、一から十まで説明されないと駄目な質だというのは、りんさんも知っていて。
かなり、詳しく話をしてくれていたと思う。
だから、今のは否定してやれるのだ。
「1番気になるのは、りらって、言われてるじゃない。」
「気になる人と…んっ!」
好きな人がイコールとは限らない。
そう言ってやろうとしたのに、後ろから手が出てきて、口を塞がれた。
その手の主、月島くんに抗議の目を向ける。
「君に言われて気付くんじゃ、意味ないデショ?」
りんさん自身に、その答えを導き出して欲しい。
小さく言われた事は、そう聞こえて。
了解を示すように頷くと、手が離れていった。