第5章 初デートは甘くない
手を引かれて駅の中に入る時、視線を感じた気がする。
振り返ってみると、さっきの女の子達だった。
もしかして、逆ナンパしようとしてた男性って木葉さんだったかな。
背は、あんまり高くない気がするけど。
確かに細身で、引き締まった良いカラダ…いや、良いスタイルをしている。
顔も、イケメンではない。
申し訳ないけど、月島くんやら、赤葦さんの方が、一般的にはイケメンだ。
だからって、気付かなかったのは失礼すぎるな。
私の、身長だとか、顔立ちだとかを判断する基準が、多分普通よりレベルが高いんだ。
1人で勝手に納得して、思考を完結させた。
「どうした?」
考え込む仕草でもしただろうか。
心配そうに顔を覗かれても、なんでもない、を示すように首を振るしか出来ない。
本人に言ったら、失礼な事ばっかり考えていたのもあるし。
それに、顔が近すぎる。
外で、これは私にはハードルが高い。
「…そ?」
納得したんだか、していないんだか分からない一音だけ発して顔が離れる。
問い詰めた所で、私が何も言わないのを分かっているんだろう。
それで、雰囲気を悪くするより、デートを楽しむモードになっているようだった。