第18章 only one
‐りんside‐
多分だけど、外されたのはりらの家のものだ。
一番、使用頻度が低そうだけど、月島くんからしたら大事なものなんじゃないのかな。
それと交換して貰えるなんて、期待しちゃうじゃないか。
喜んだら、その分後で辛くなる。
期待を振り払うように頭を振ったら…。
「…いっ!」
傷口が、痛んだ。
包帯の上から、頭を押さえる。
溜め息が聞こえてきて、呆れられてるのは分かって。
「鎮痛剤、出てないの?」
「出てる。飲むよ、これから。」
極力、冷静に対応した。
「水、持ってきてあげるよ。」
また、上辺だけの優しさ。
分かっていても、今は痛くて拒否するどころじゃないから甘えた。
キッチンから戻ってきた月島くんの手から、グラスを受け取ろうと手を伸ばしたのに、渡してくれない。
その上、意地の悪い笑顔を浮かべたと思ったら、自分の口にグラスを付けた。
唇に吸い込まれていく透明な液体。
やたらとセクシーに見えて、惚けてしまう。
だから、顔が近付いてきても避けられなかった。
いや、避けようとしなかった。
唇が重ねられて、その隙間から生温い液体が口内に入ってくる。
それを飲み込んだのを確認するような間があって、唇は離れた。
「薬より、こっちの方が効くんじゃない?」
今、起こった事が、よく理解出来ていない。
考える事に集中して、確かに痛みは飛んでいた。