第18章 only one
‐月島side‐
僕にしては、頑張った方じゃない?
りんさんが、どんな言葉で傷付くのか分からないから、下手な事は言ってないし。
合鍵を渡してくれたのは、少しでも僕を信用しようとしてくれてるってコトだよね。
テーブルに出された鍵を付けようと、キーケースを取り出した。
中には、3つの鍵。
自宅、車、そして、りらの家の、鍵。
こっちに来てから、りらが渡してくれたもの。
また、あの家に入っていいと。
まだ、りらの傍に居てもいいと。
言われたみたいで嬉しかったのを覚えている。
だけど、りらの眼が僕に向く事はないし、もうそれを求めてすらいない。
だから、これはもう、イラナイ。
3つしかない金具から、その鍵を外して、付け替えた。
こっちの鍵の方が、今の僕にとっては重要なんだ。
「いや、あげる訳じゃないから。他の外してまで、そこに付けないでよ。」
「僕の勝手デショ。無くされてもいいの?」
それを、言葉で説明してあげられたら、良かったのに。
りらの家より、りんさんの家に来たい。
りらより、りんさんの傍に、居たい。
ここまで、多少強引な言い方であれど、素直にりんさんの為にやりたい事を告げてきて。
頑張るのに疲れている口から、そんな言葉が出る筈は無かった。