第18章 only one
‐月島side‐
初めて口に出した本心なのに、それすらも素直じゃない言い方をして。
りんさんが、正しく受け取ってくれたかは分からない。
気持ちが落ち着かないまま、帰り着いた家。
玄関を開けると、同居人…黒尾さんが立っていた。
「オカエリ。」
胡散臭い笑顔で、唇が動く。
これ、怒ってる時の顔じゃない?
僕、何もした覚えないんですけど?
「お前、何で帰ってきてんの?」
警戒していて、挨拶を返せないでいると、怒りの理由が聞こえてくる。
意味が、分からなかった。
「りんサン放って、何で帰ってきてんの?」
すぐに、言い換えられた言葉。
理解は出来たけど、りんさんに何かがあった事を、何で知ってるの、黒尾さん。
「別に、りんさんと常に一緒なワケじゃないですから。」
「でも、今日は一緒に居てやるべきだったんじゃね?」
面倒臭いし、落ち着かない上にイライラがプラスされそうで、誤魔化そうとしたけど無駄で。
スマホの画面を見せてきた。
【ちょっと目立つ場所に怪我しちゃった。外出るの恥ずかしいから、ご飯になるもの何か買ってきて貰えないかな?】
「なんで、お前より俺を頼ってきてんだよ。おかしいだろ。」
「そんなの、僕の方が聞きたいですよ。」
さっきまで、一緒に居たのに。
それくらい、頼まれればやってあげるのに。
あぁ、また、だ。
思考の中ですら、素直じゃなくて恩着せがましい。
こんな男には、頼りたくなくて当然だね、って。
諦めるほど、潔くはなれなくて。
「黒尾さん、僕、今日は帰らないんで。」
「おぅ。行ってこい。」
すぐに再び家から出た。