第18章 only one
‐りんside‐
どうせ、砕かれてしまうだけなのに、期待しちゃうから、傍に居たくない。
後ろからついてきているのは分かったけど、振り返らずにタクシー乗り場に向かった。
「付き添ってくれて、有難う。こんな状態だから、2、3日はお休み貰うかも。迷惑掛けたら、ごめんなさいね。」
別れ際まで無視は、流石に大人げないから、同僚としての言葉を投げ掛ける。
「ホント、休まれると迷惑なんだけど。…僕、貴女が居ないと落ち着かないカラ。」
返ってきたのは、意外な言葉。
これが、彼の本心なのか。
上辺だけの優しさなのか。
判別は付かなかったけど、嬉しかった。
「なるべく早く復帰するわ。生活掛かってるからね。」
最後は、冗談混じりに笑って喋る事が出来た気がする。
タクシーの扉が閉まって、風景が動き出した。
外を眺めようと目を向けると、窓に映る自分。
頭に、包帯。
傷が残るかも知れないって言われている。
浮上していた気持ちは、あっさりと転げ落ちた。
月島くんは、上辺だけ取り繕うのが上手い人だ。
さっきのは、きっと本心じゃない。
だって、顔に傷がある女なんか、隣に置きたくなんかない。
マイナスな思考が頭を占めていく。
1番になれないと分かっているのも重なって、酷く落ち込んだ。