第18章 only one
‐月島side‐
待っている時間って、こんなに長く感じるんだ。
彼女が処置室に入ってから、まだ十数分しか経っていないのに、大分長くここに居る気がする。
落ち着かなくて、イライラして、時計と処置室の扉を交互に何回も眺めていた。
やっと、扉が開いて中から出てきた彼女は、頭に大袈裟なくらいの包帯を巻いていて、痛々しい。
「…まだ、居たんだ。」
それなのに、最初の一言にはトゲがあった。
「付き添いで来ておいて、先に帰る程、薄情じゃないんで。」
言い返すと、状況が悪化するだけだと分かっているのに、素直になれない。
心配で堪らなかった、とか、声に出せたらどんなに楽な事か。
気を取り直すように息を吐いて、片手を差し出す。
「その格好で一人歩きしたくないデショ。送ってあげるよ。」
こんな時の言葉まで、素直じゃない自分が本当に嫌だ。
送ってあげる、じゃなくて。
心配だから送りたい、なのに。
それすら言えないなんて。
彼女は手を眺めているだけで、中々掴んで来ない。
イライラが戻ってきて、強引に手を握ろうとしたんだけど。
「いいよ、送らないで。私の家、反対方向だし。」
あっさりと避けられて、りんさんは先に歩き出した。