第18章 only one
‐りんside‐
危機管理が甘かったのは分かっている。
倒れはしないと思っていても、無茶はするべきじゃなかった。
結果、倒れないなんて思い込みで。
棚がグラついたのに気付いて、間一髪で直撃を免れただけ。
でも…。
心配よりも先に、嫌味を言う彼の言葉に傷付けられるくらいなら。
棚の下敷きにでもなった方が、良かったかも知れない。
怪我をした場所よりも、心の方がずっと痛くて、泣きそうになった。
だけど、今泣いたら、月島くんの立場が悪くなる。
涙を堪えていると、遠くからサイレンの音が聞こえてきて。
倉庫の中が騒がしくなった。
怪我をした場所が頭だから、念の為ということで救急車に乗る事になる。
誰かが同乗してくれる事になって、一応は責任者の部長にお願いしたんだけど。
「僕が行きます。パートナーなので、良いでしょう?
部長、事後処理をお願いしますね。」
面倒事を押し付ける時の、やたら爽やかな笑顔を作って、月島くんが乗ってきた。
仕事上のパートナーと言いたかったのか。
私生活のパートナーと言いたかったのか。
救急隊員に囲まれてしまって、聞く事は出来ない。
でも、期待したら砕かれるだけだから、聞けない状況で良かったと思った。