第18章 only one
‐月島side‐
倉庫の方から派手な音が聞こえてきて、そこに続く扉の方を向く。
数秒後、慌てた様子で倉庫の人間が何人も入ってきたと思ったら、救急車を呼ぶように騒いでいた。
棚でも倒れたかな。
この騒ぎに乗じて、りんさんに逃げられたら困る。
そう思って、他の人がやるだろうと無視をしたのだけど。
ある事に、気付いてしまった。
倉庫の人間は、全員この場に居る。
救急車を呼ぶような怪我人や、病人には見えない。
じゃあ、誰がそれを必要としてる?
嫌な予感がした瞬間、体が勝手に動いていた。
騒いでいる人達の横をすり抜けて、倉庫に向かう。
広い場所の、どこに居るかも分からないのに、走り回って…。
「月島…くん?」
頭を押さえた、その人を見付ける。
その後ろには倒れている棚。
思った通り、怪我をしたのはりんさんだった。
指の隙間から赤い液体が滴って、制服を汚している。
「ヘルメット被らなかったの?バカじゃない?」
心配を口に出せたら良かったのに、慣れた嫌味な言葉しか出てこなかった。
「うん、馬鹿だね。心配して来てくれたとか、ちょっと期待した。…本当に、馬鹿だ、私…。」
本当のバカは僕の方。
言い合いがコミュニケーションで、声を掛けるのは心配しているから、なんて。
りら相手にしか通用しない事なんか、分かっていた筈なのに。
それ以外は、何も言えなかった。