• テキストサイズ

【HQ】繋がる縁の円

第18章 only one


‐月島side‐

倉庫の方から派手な音が聞こえてきて、そこに続く扉の方を向く。
数秒後、慌てた様子で倉庫の人間が何人も入ってきたと思ったら、救急車を呼ぶように騒いでいた。

棚でも倒れたかな。
この騒ぎに乗じて、りんさんに逃げられたら困る。

そう思って、他の人がやるだろうと無視をしたのだけど。
ある事に、気付いてしまった。

倉庫の人間は、全員この場に居る。
救急車を呼ぶような怪我人や、病人には見えない。

じゃあ、誰がそれを必要としてる?

嫌な予感がした瞬間、体が勝手に動いていた。

騒いでいる人達の横をすり抜けて、倉庫に向かう。
広い場所の、どこに居るかも分からないのに、走り回って…。

「月島…くん?」

頭を押さえた、その人を見付ける。
その後ろには倒れている棚。
思った通り、怪我をしたのはりんさんだった。

指の隙間から赤い液体が滴って、制服を汚している。

「ヘルメット被らなかったの?バカじゃない?」

心配を口に出せたら良かったのに、慣れた嫌味な言葉しか出てこなかった。

「うん、馬鹿だね。心配して来てくれたとか、ちょっと期待した。…本当に、馬鹿だ、私…。」

本当のバカは僕の方。

言い合いがコミュニケーションで、声を掛けるのは心配しているから、なんて。
りら相手にしか通用しない事なんか、分かっていた筈なのに。

それ以外は、何も言えなかった。
/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp