第18章 only one
‐りんside‐
考えてみれば、月島くんの方から食事に誘われた事なんか無い。
今まで、誘うというよりは、私から誘わせるように仕掛けてくるだけだった。
避け始めて数日。
今のタイミングで、そんな慣れない事をしてきたのは、私を責める筈に違いない。
1年で1番にしてくれと言った。
まだ期間はあるのに、1番じゃない事にショックを受けて避けるなんて、嫌味を言われる予感しかしない。
断りを直接入れても、丸め込まれそうな気がして、仕事上の理由で離れるのがベストだと思った。
実際、在庫の件は気になっていた事でもあったし、と自分で言い訳をしておく。
許可を貰って入った倉庫。
ヘルメットは忘れたけど、簡単に何かが落ちてきたりする訳はない。
営業だった時代から、何回も入っていて慣れた場所を歩き、問題の在庫が合わない棚へ。
そこに着いた時、爪先で何かを蹴る感触。
しゃがんで見ると、床に品物が落ちていて。
棚の下に何個か入り込んでいた。
これが原因で、数が合わないんだろうか。
取り敢えず、棚の下から見える限りの品物を取り出して数えた。
それでも、数個足らなくて、もう一度棚の下を覗く。
「…あ、あった。」
端の方に隠れるようにして落ちている物を見付けた。
それを指先で摘まんで引っ張ったけど、棚の脚に挟まっているのか、かなり重い。
これ1つ引き抜いたくらいで、倒れはしないだろう。
確認で入ったからには、在庫数合わせたいし。
いらない責任感で、どうしてもそれを取り出そうとして、力任せ引っ張った。