第18章 only one
‐月島side‐
あの飲み会の夜以来、りんさんが僕の眼を見なくなった。
会社で仕事の話をしている時も、顔は見るけど目は合わせない。
多分、だけど。
僕が部屋に戻ってから、赤葦さん達と何かを話して。
僕に聞きもせず、勝手に誤解をしている。
だから、あの後もわざわざタクシーなんか使って帰ったんだ。
帰らせた訳じゃないのに、りらに怒られた僕の身にもなって欲しいよ。
ホント、これだから女って面倒臭い。
だけど、その面倒臭い女の視線が僕に向かないと気が済まない自分が、もっと面倒臭い。
このままだと、苛々ばかりして、精神衛生にも良くないから、今日の仕事が終わったら話でもしようと思って。
仕事のメモの端に、食事の誘いを書いておいたのに。
「コンピューター上の在庫数と、倉庫の実在庫が大幅に合わない品物があるので、確認したいのですが。
倉庫の方に行っても宜しいでしょうか?」
りんさんは、それを拒否するように、部長に話を付けて、他の部署に行ってしまった。
直接断りを入れたくない程、嫌われるような事をした覚えはない。
何としてでも捕まえたくて、帰る前は事務所に戻るだろう事も予想して、仕事をしながら待っていた。