第18章 only one
‐りんside‐
りらには敵わない。
それは、前々から気付いていた事なのだけど。
1番になれないと実感するのは、思っていた以上に辛い。
「君って、そんなに注意力無かったっけ?」
「気を付けてはいた。」
「それで怪我するの?そんなに、皆に心配して欲しかった?」
「違う。」
隣で繰り広げられているのは言い合いなのに、月島くんは生き生きしていて。
この会話の間だけでも、りらを独占出来ている喜びを噛み締めているように見えた。
「りらー!この家で一番デカい皿ってドコ?」
キッチンの方から聞こえた木葉の声で2人の会話は中断されて、りらが去っていく。
それを目で追う姿を見ていたくなくて、顔を逸らした。
そんな分かりやすい行動を取っていても、月島くんが構ってくれる筈は無く。
木葉とりらが鯛の姿造りを運んでくると、全員がこの場に揃って、乾杯の為に話し声が止む。
「…今日、集まって貰ったのには、俺から報告がありまして。」
音頭を取るのは、目立ちたがりの光ちゃんとか、仕切りたがりの鉄朗じゃなくて赤葦で。
「みつと、結婚します。これからは夫婦としての俺達を、宜しくお願いします。」
みつが、指輪をしているから気付いていたけど、今の私が聞くには、あまりにも酷な話だった。