第17章 彼氏トレード
泣いてしまった理由なんて、本人が分かっていない。
だけど、すぐには結婚出来ないっていうのは私にも都合が良いのだから、それじゃないのだけは分かってた。
だから、お断りする言葉が反射的に出ていた。
ただ、相変わらず言い方なんか考えてなかったから、きっと秋紀を傷付けた。
「…なぁ、りら。」
「何。」
「俺は、さ。やりたい事があるから待ってて欲しいって、話してたろ?そんで、その内容は今話した訳だ。
お前が言う‘無理’は、今は無理?それとも、俺とは無理?どっちにしても、どうして無理なのか、話してくんね?」
秋紀が、無理に笑ってるのが分かる。
少し鼻が赤いし、瞳が潤んでいた。
ここで、何も言わずに居たら、もっと傷付ける。
話を纏めるのも、言葉に出して伝えるのも苦手だけど、言わなきゃならない。
「今は無理。ずっと無理かも知れない。」
正直に答えると、秋紀の涙腺が崩壊した。
「…私、きとりちゃんを待ってる。あの家で、あの人におかえりなさいって言いたい。
いつ帰ってくるか、分からない。もしかしたら、東京に帰ってくる事は、無いかも知れないけど、私は待ちたい。」
それでも、話は続けた。
私は、私の決意を知って貰いたかった。
「…そっか。なんか、りららしい理由で、納得したわ。」
秋紀が涙を止めて笑ってくれたから、安心出来たのだけど。
「納得しちゃ、駄目でしょう。」
「姉ちゃん、親じゃない人の為に結婚諦めてどうすんの?」
後ろから、2人分の声が聞こえてきて、やたらと攻められる展開になった。