第17章 彼氏トレード
‐赤葦side‐
子どもが出来てもいい。
そう考えるのは、間違いなくみつの中には、俺との未来があるという事。
俺が勝手に動かなくても、彼女自身で過去は精算しきっていたんだ。
それならば、わざわざ昔の男の話なんか聞かせてやらなくていい。
これは、みつを傷付けた事への報復に使わせて貰うとしよう。
俺は、大切な人を傷付けた人間を許してやる気がないから。
りらを使ってまで手に入れたものを、ただ消去する気は無く。
別の使い道を考えていた。
「…京治。」
「何?」
「あの、さ。ワガママ、言っていい?」
現実に引き戻すのは、みつの声。
「聞いてやるかは、内容によるよ。」
こんな事を言っても、実際は出来る限りの事はしてやりたいと思っている。
「京治の歪んだ愛情だけで充分だと、私も思ってるんだけど、さ…。
歯形は、代替品って言ってたでしょ?だから、その…本物が、欲しいなって。」
それが、こんなワガママならば聞いてやらない訳がない。
「いいよ。」
だから、了解の返事をしたけど。
「…本当に?じゃ、あの…ついでに、正式なプロポーズもして欲し…。」
「それは、しない。」
すぐに調子に乗って、恋愛不適合者の俺に無理難題を押し付けてくる。
そっちは出来る筈がないから、即答で断ると、不服そうに唇を尖らせていた。
みつが望むなら、してやりたいとは思っても。
何故か、コイツに愛の言葉を囁く事が相変わらず出来なくて。
「わざわざプロポーズしなくても、お前を貰ってやれるのは俺しかいないだろ?」
代替案は、前と変わらぬ俺なりの愛情表現の言葉だった。