第17章 彼氏トレード
‐みつside‐
今の拒否は、私達の関係の終了宣言のようなものだ。
終わったんだな、って。
どこか他人事みたいに考えていた。
「お前の言った手段は、俺も考えた事があるよ。でも、それを使わなかった。
その理由、お前に分かる?」
淡々と聞こえる声が、右から左へ流れていく。
反応をしてやれる余裕がない。
「もし、お前を監禁したら一番に気付くのはりらだろうね。幾ら俺達が互いに歪んでるって知ってても、自由を奪うやり方を許す人じゃないだろ?
先に子どもを作る事もしなかったのも、りらや、お前の家族に嫌われるのを避けたかった。」
何とか理解出来たのは、結局は姉ちゃんに嫌われたくないって事だけ。
京治は、やっぱり姉ちゃんを最優先にしているって残酷な事実。
視界が滲んで、京治の顔もマトモに見えなくなってきた。
「…最悪、俺がりらに許されないのも、りらやお前の家族に嫌われるのも構わないけど。」
流れ去ろうとした音が、頭の中にピタリと留まる。
溢れそうだった涙も同時に止まって、次の言葉を待った。
「みつが、一回失敗してるから、そんな男じゃ任せて貰えないだろ。
お前の事、一生面倒見るつもりで居るのに、引き離されてやるつもりが、ない。」
真っ直ぐ私を見る眼に、はっきりとした決意を感じる。
「お前を縛るのは、首輪でも、子どもでもないよ。
俺の歪んだ愛情だけで、充分だ。」
左手を掴まれて、いつかと同じように薬指を口の中に入れられた。
その根元に、鋭い刺激。
それは、とても甘美な痛みだった。