第17章 彼氏トレード
‐赤葦side‐
判断力は、ある方だと思っている。
自分に出来る事、出来ない事。
その二通りに物事を仕分けて、出来ない事は放って生きてきた。
出来ないなら出来ないなりに努力をすべきだ、なんて根性論は苦手で。
出来ないなら出来る代替案で無難に済ませる、そんな生き方だった。
愛を囁いて傍に居たいと思わせるやり方は、出来ないからやらない。
焦がれる程に愛した女性に、今までやってきたのは裏で動いて近くに留まる程度の事だったから、そのやり方を知らないんだ。
代わりにやっていたのが、みつを貶めて、自分しか居ないのだと思い込ませる方法だった。
みつ自身も、俺の愛情表現が歪んでいるのを知って、それで良いと言っていた筈なのに。
「…お前、どういうつもり?」
「え?何が?」
「夏の終わりぐらいにさ、皆で遊園地に行った時の事、覚えてる?」
「覚えてるけど…それが、どうしたの?」
「あの時、自分で俺に貶されている方が良いって言ってたと思うんだけど?」
ごちゃごちゃ考えるばかりで、冷静になりきれない頭。
口から出るのは、みつを責めるような言葉ばかり。
自分が恋愛には不向きな人間なのだと再確認する。
絶対に言えはしないけど、みつは見た目も良くて、性格は明るく人に好かれるタイプだし。
家事が出来なくても、今回のように努力はする。
バツなんて欠点をカバー出来るだけの魅力を持っているコイツを俺に縛り付けておくなんて。
そんな事してはいけない。
手放してやらなきゃならないのを分かっているのに、別れの言葉がどうしても出なかった。