第17章 彼氏トレード
赤葦さんは、何を目的として2人が実家に居るか分かってて。
廊下を歩きながら、説明してくれた。
みつは、元夫に女が出来てた事を当時は知らなかった。
色々と難癖を付けて別れようとするのは、自分が見た目だけ良くて家の事は何も出来ないから、と思い込んでいたようだ。
それは、今でもみつの傷になっていて。
赤葦さんと付き合う際も、自分の悪い部分として家事が苦手なのをあげたらしい。
だから、少しでも覚えようとして秋紀に料理を習ってるんじゃないかって事だった。
私じゃなくて、秋紀に教えて貰おうとするのは、赤葦さんに、私の料理と比べられたくないから。
私に教わったのに、と言われたくないから。
赤葦さんが、私とみつを比べたりしない人だって分かっていない事には腹が立つ。
今の、赤葦さんの執着の矛先は間違いなくみつ自身で。
鈍いと言われる私ですら、それに気付いたというのに。
私より秋紀を頼った事もだけど、みつが赤葦さんを信用しきれない部分にも苛々しながら覗いた台所。
見えたのは、更に私を苛つかせる光景。
「何やってるんですか?」
同じく、それを見てしまった赤葦さんは、無表情のまま平坦な声を出す。
そこで気付いたようにみつがこちらを向いた。
その顔は、泣き顔で。
「木葉さん、言い訳があるなら聞きますよ。」
隣から、温度を感じない音が聞こえる。
気温はそんなに変わっていない筈なのに、鳥肌が立つくらい冷たい空気がこの場を支配した。