第17章 彼氏トレード
‐木葉side‐
りらは度胸があっから、食材がどんなにグロいもんであっても平気で触る。
白子って見た目が脳みたいですね、とか言いながら手掴みで鍋に放り込んだ時なんか、若干引いたくらいだ。
まぁ、りらのバイトが海鮮部門の裏方ってんだから、出来なきゃ困る訳だが。
そんな想像しながら、よく触れるもんだ、と思ってた。
そのりらそっくりの妹が、食材相手にビビってる姿は正直に面白い。
素手は嫌だからって、箸で殻を剥こうとか、どう考えても無理だろ。
「…ふっ、くっ!」
笑いまで起きてきて、口から音が漏れる。
それを拾って、こっちを振り返った顔は今にも泣き出しそうだった。
「笑わないでよっ!こっちは出来ない事でもやらなきゃって、必死なの!京治くんしか居ないんだから!」
みつの声は震えてて、涙が流れ出す。
どうして、ここまで思い詰めているか分からねぇよ。
赤葦が、料理出来ねぇくらいで離れる訳ねぇだろ。
りらも訳アリな女だが、コイツにもバツイチ以外に何か訳があんだろう事は分かった。
だが、それを聞くのは俺の役目じゃねぇな。
赤葦が聞いて、どう判断するか、が問題なんだから。
取り敢えず今は泣き止ませて、料理の続きをやるとするか。
宥める為に頭を撫でてやると、背中に腕が回ってくる。
肩口に顔を埋めて本格的に泣き始めてしまった。
こりゃ、泣き止むまで下手な事はしない方が良いだろうな。
優しくしても、厳しくしても、もっと泣くだろ。
仕方無しにそのままにしておいたが、視線を感じてそちらに目を向ける。
そこに、居ちゃいけねぇ奴等が居た。