第17章 彼氏トレード
‐みつside‐
悶えていたアキノリくんが立ち直るまでに、数分。
更に、すぐにでも姉ちゃんに会いたいと電話をしようとするのを止めるのに、更に数分。
かなりの無駄な時間を使ってから、やっと本題の料理を始めた。
「…エビって何でこんなに足とかキモいの?陸上に居たら甲虫とかだよね、この姿。触るの、嫌だ。」
「変な事言うなよ。俺も触りたく無くなんだろ。」
自分で買った食材なのに、最初からつまずいている。
エビの殻が剥けない。
アキノリくんは、仕方なさそうに溜め息を吐きながらも、代わりにやってくれる。
手際が良すぎるのが妬ましくて、ちょっと意地悪したくなった。
「ねぇ、知ってる?」
「なんだよ、その某豆型の犬みたいな喋りは。」
「エビの殻ってね、Gの羽と同じ成分なんだって。」
豆知識を披露するとアキノリくんが固まって、手からエビが滑る。
シンクに音を立てて落ちた様は、まるでマンガみたいだった。
「おーまーえーはーっ!やる気失せるような事言うんじゃねぇよ!」
本気で怒ってくる姿も、もうマンガにしか見えなくなって笑えてくる。
それを止めるように、軽く頬を摘まれた。
さっきまで、エビを触っていたから濡れていて、しかも生臭い。
嫌だからさっさと振り払うと、気分を害しちゃったみたいで。
「料理覚えたいんだったな?教えてやっから、全部自分でやれ。」
手伝いは完全に拒否の方向性に転換されてしまった。