第17章 彼氏トレード
赤葦さんとの会話は、みつが中心だ。
顔が似ている分、よく比べられてきた私達だったけど。
それをしない所を見ると、赤葦さんがみつ自身をしっかり見てくれているのが分かる。
それが本当に嬉しかった。
でも、元々口数の少ない私が会話を続けるのは難しくて。
話が途切れた時に、赤葦さんが移動を示すように立ち上がる。
どこか行きたい場所でも出来たのかと思って、何も聞かずにカフェを後にした。
赤葦さんの目的らしい場所に誘導されながら歩いていたけど、次第によく知った道になって。
「こっち、実家ですが。」
不信感を隠す事無く問い掛ける。
「知ってるよ。」
それでも赤葦さんは、大して気にしていない様子で歩き続けていた。
うちの親、特に父は厳しい。
お互いに他の相手と交際していると知っていて、2人きりで行動しているのを許す訳がない。
「多分、木葉さん達も来てるよ。」
止めようと思ったけど、この一言で行こうと考え直せる不思議。
今、みつじゃなくて秋紀を挙げたのは、その為だろう。
赤葦さんの人心掌握術は、人並み外れていると思った。
結局ノせられて、着いてしまった我が実家。
ここまで来て後戻りは出来ない。
覚悟を決めて玄関を開けると、赤葦さんの予想通り、2人の靴があった。