第17章 彼氏トレード
‐赤葦side‐
俺だけが接触しても意味がない。
だから、思い出させるように、似た顔を持つりらを連れてきた。
きっとみつは、離婚の理由も誤魔化していただろう。
流石に、りらのあんな動画がネットで拾えるなんて話はしない。
その動画の件をりらに知られるリスクがあっても、あの男の証言が欲しかった。
みつに完全に過去の精算をして欲しいから。
そうしなければ、いつまでもバツを盾にして、俺との未来を見てくれない。
「…なんで。」
考え事の最中に聞こえた声で我に返った。
俺がこんな事をした訳を知りたい。
それを伝えるには少し足りない言葉。
「何が?」
「…何でも、無いです。」
わざと分からなかったフリをすると、聞いてはいけなかったと判断したらしいりらが話を終わらせてくれた。
別に、俺としては話しても問題ない。
口止めしなくたって、りらは何も言わない女だ。
だけど、1つ答えたら知りたい事は聞いてしまえ、をやってくるりらだ。
動画がどんなものだったか聞かれたら、俺の口からは話せない。
「りら、心配しなくていいよ。俺は、みつが家事をやらないの、気にしてないから。
人には苦手分野があるものだし、出来る人がやった方が効率も良い。」
全く違う話題は、単純な木兎さんじゃないから使えない。
りらはマイナス思考が過ぎるタイプだから、そんな事をしたら、本当に自分には話したくないのだと落ち込む。
それは避けたくて、少しは関わりのある話をして時間を過ごした。