第17章 彼氏トレード
私と目を合わせたまま、逸らそうとしない女。
こちらに聞こえるような声で、男の元妻について話を始めた。
内容は…。
気付かないで離婚してくれて良かった。
慰謝料取られないで済んだから。
バカな女だ。
大体は、こんな感じで。
その話には男も話にノって、揃って不倫していた事実を武勇伝のように語っている。
私をみつと勘違いして、馬鹿にしてるような気がした。
赤葦さんがキレないか心配になったけど、その顔は笑っていて。
テーブルに置かれたスマホを指差している。
画面には、録音中の文字。
それを何に使おうとしているかは分からない。
公衆の面前で修羅場とか、悪目立ちしたいタイプじゃないから、注意はしないでおいた。
不意に赤葦さんが後ろを、男の方を向く。
「あぁ、聞き覚えがある声かと思ったら、りらの妹さんの旦那さん。お久し振りです。」
声を掛けられた男は、怪訝そうに眉を寄せた。
「二次会の方でお会いした赤葦です。奥さん側の友人だったので、あまりお話はしませんでしたが。」
それで、思い出したように男が頷く。
そのすぐ後には、すでに離婚していると言っていた。
しかも、聞いてもいないのに他に女が出来たから別れた事を悪びれず話し。
その上で、家事の一つも出来ない女を嫁に出したうちが悪いと、あろうことか私に同意を求めてくる。
そこで義姉さんと呼ばれたから、私達の見分けはついているようだ。
今となっては、そんな事はどうでもいい。
確かに、何一つやらなかったのはみつの落ち度だ。
だけど、この場で更にみつを貶めるなんてしたくない。
返答が出来ずに居ると、赤葦さんが小さく首を振った。