第17章 彼氏トレード
‐木葉side‐
りらが喜ぶ事を優先したい。
俺よりもりらに教わって欲しい。
アイツ、人に教えるのは苦手って言うのに、この妹、みつには教えたがってんだよな。
だから、断ろうと考えたが。
「教えてくれるなら、姉ちゃんの事、教えてあげるよ。交換ね。そうだな、調理師を目指したきっかけとか、どう?」
「アイツが料理好きだからだろ?そんなん、知ってるぞ。」
「じゃ、料理を好きになった理由を教えてあげる。」
ちょっと、興味を引かれる条件をだされて、言い返す事が出来なくなった。
初めから、目的がそれだったから行きたいのは近所のスーパーで。
作りたいものも決まってるのか、食材で悩む事もなく買い物を済ませる。
そこで、気付いたように立ち止まったみつ。
同じように止まって、首を傾げて疑問を示す。
「どこで作れば良いのか、考えて無かった…。」
「赤葦ん家で、良くね?」
「包丁すら無い家なんだけど?」
「オイ。お前等、今まで飯どうしてたんだよ?」
「姉ちゃん頼り。」
りらの苦労が目に浮かぶ。
これは、交換条件とか関係無く、みつに料理を覚えさせて、最低限の器具くらい揃えさせねぇと、一生りらがコイツ等の飯炊きだ。
「包丁くらいなら、買ってやっても良いぞ。職人仕様の高いヤツじゃなくても、充分だろ?」
「それは有難いんだけど、他の男を家に入れて京治が許すかな…。」
「…俺の死亡フラグ立つな…。」
提案をしてみたものの、危険性が高過ぎる。
2人きりで家の中に居たら、何も無くても大変な目に遭うのは予想出来た。
そうなると、俺の家も駄目だな。
食材を買った後に、直面した問題に眉を寄せて考え込む。
ややあってから、何か思い付いたかのようにみつが俺の手を引いて歩き出した。