第17章 彼氏トレード
‐みつside‐
アキノリくんは、バカじゃない。
だから、私が彼氏交換だとか言い出したのには、理由があるのだと気付いている筈だ。
それで、付き合ってくれるんだから、協力してくれるつもりだろう。
ただ、内容を口に出して言うと京治に聞かれていそうな気がするんだよな。
私を束縛する為なら、盗聴でも何でもする人だ。
現に、私のスマホはフル充電してきたのに、異常な電池の減り方をしている。
非合法的なアプリでも入ってるんじゃないだろうか。
ここまでしてくれるのは、私を思えばこそだと分かっているから、嬉しいんだけど。
今回ばかりは、聞かれたくない話がある訳で。
「なんか、スマホの電池ヤバいな。一回電源切っちゃお。」
わざとらしく、言葉に出してからスマホの電源を落とした。
「独り言にしちゃ、デカイ声だな?」
「わざと、だよ。多分だけど盗聴されてたから。」
「赤葦って、そこまでやるのかよ…。」
「それだけ、愛されてるって事だよねー。」
突っ込みをされたから、理由は話して。
私が嫌がる素振りなんかしたら、京治が悪者になるから、寧ろ幸せ感を出しておく。
凄く、引いた目で見られたけど、それは気にしない。
さっさと本題に入ろうか。
「…でさ、アキノリくん。私が貴方とデートしたかった理由、分かる?」
「どうせ、何か企んでるんだろう事は分かってるが、内容までは知るか。」
「…あのね、料理、教えて欲しいの。」
「…は?なんで俺?」
時間がそんなに無い中で、無駄に話を引き伸ばしたくはなかった。
用件を口に出してみると、嫌そうに自分を指差している。
姉ちゃんに教われ、と言いたいんだろうけど。
姉ちゃんの味を覚えて、京治に食べさせるのは嫌だった。