第17章 彼氏トレード
約束の日。
赤葦さんから、家で2人きりは嫌だろうからと、外でデートの提案をされて。
その待ち合わせ場所に向かう。
時間より前に着いた筈なのに、赤葦さんはすでに来ていた。
でも、かなり近付いても、私に気付かない。
片方の耳に、イヤホンが入っているから、それに集中しているんだろう。
「…赤葦さん。何を聞いてるんですか。」
この人の事だから、何をしているかは予想がついたけど。
それは流石に犯罪だから違って欲しい。
普通の音楽とかであってくれ。
「りらも聞く?」
答えは、音で貰える事になった。
差し出された、もう片方のイヤホンを恐る恐る耳に差し込む。
『…じゃ、行こっか。』
聞こえてきたのは、雑音混じりで、聞き取り辛い声だけど。
間違いなく、みつのものだ。
やっぱり、こういう事をする人だったか。
呆れて横目で顔を見ると、口元が笑っている。
赤葦さんの愛情の歪みを再確認してしまった。
いくら私がバカでも、人の感情を読むのが苦手でも。
みつが、わざわざ赤葦さんから離れるなんて、知られないように何かやりたい事があると分かってる。
それは、多分赤葦さんにとっても悪い事では無い筈だ。
これ以上、聞かせる訳にはいかない。
イヤホンのコードを引っ張り、赤葦さんの耳から引き抜いた。
「…今日は、私とデートですよね。」
少しでも、私に気を向かせようと、腕に絡み付く。
こんな事、秋紀にすらした事はないけど、みつに考えがあるなら、邪魔をさせたくなかった。