第16章 複雑に絡む
「…って、訳で。何故か付き合う事になっちゃいました。」
昨晩から始まった飲み会が終わったのは明け方。
帰宅しようとした時に、りんさんの自宅に呼び出された。
月島くんと、何かあったんだろうとは思っていたけど、こんな報告で。
どういう反応をしたら良いのか。
「…おめでとう、ございます?」
「なんで、言葉尻を上げるのよ?」
「りんさん、あまり幸せじゃなさそうなので。言って良い言葉か、分からなかったです。」
取り合えず、祝福はしてみたものの。
些細な事を突っ込まれて、つい本音が漏れる。
「両想いじゃないって分かってるのに、幸せな気分になる訳ないじゃない。」
浮かない顔をしたままのりんさんは、盛大な溜め息と共に心境を吐き出した。
でも私は、月島くんが本当に気になりもしない人と付き合うなんて、無いと思っている。
だって、私の知る月島蛍という人物は。
素直じゃない、ひねくれた男だけど。
好き嫌いは、はっきりしていて、嫌いなものを好きだと偽る事はない。
木兎さんのような単純さは持ち合わせてないから、好きだと告白されたから気になるという事もない。
それに、りんさんとは、同じ会社に勤めているから、別れた場合でも毎日のように顔を合わせなきゃならない。
そんなリスクを背負って、適当な気持ちでりんさんと付き合うなんて有り得ない。
それを説明してみても納得いかないようで、眉を寄せていた。
こうやって、後ろ向きな考え方になっている人に何を言っても無駄だ。
帰ろうと立ち上がった時、丁度良く月島くんがリビングに入ってきた。