第16章 複雑に絡む
‐りんside‐
ヒステリーを起こすなんて最悪だ。
しかも、言わないつもりだった事まで勢いで口に出した。
会社で毎日のように顔を合わせるのに、気まずくなるのは嫌だ。
家の中で2人きりだし、酔っていたのもあって、間違い起こしても良かった、とか。
言い訳して誤魔化してしまおうか。
それで、丸め込まれてくれるとは思えないけど。
「…ねぇ。こっち、見てくれない?」
「いっ!」
頭の中で思考を巡らせていると、目尻に鋭い痛み。
触れていた親指の爪が立てられている。
従わないと、顔に傷を残されそうだったから、視線を向けた。
「僕の事、そう見てるなら、それらしい態度取ってくれない?可愛げ無さ過ぎ。」
見えたのは、いつも通りの嫌味を含んだ笑顔。
流石にそこまで言われたら、カチンときて。
「いや、それなりに分かりやすかったと思うんだけど。昼休憩の度に絡んだり、月島くんの知り合いと仲良くなろうとしたり…。現にみつは、すぐ気付いたんだけど?」
そっちが鈍いだけだと言い返す。
気まずくなりたくないから誤魔化して、無かった事にしたかった筈なのに、肯定する形を取ってしまったと、後から気付いても遅く。
「…へぇ。さっきの言葉、認めちゃうんだ?」
更に意地悪く笑みが深まっていく。
完全に、逃げ道が無くなってしまった。