• テキストサイズ

【HQ】繋がる縁の円

第16章 複雑に絡む


‐月島side‐

感情的になっている女性程、面倒臭いものはない。
声は冷静を保ったように見せ掛けてたけど、零れている涙が、彼女の状態を物語っている。

ここで、慰めてやるのが普通なんだろうけど。
生憎と、ひねくれものの僕には出来ない事で。

「泣くくらいなら、やらなきゃ良かったんじゃない?バカじゃないの?」

口から出たのは、追い討ちを掛けかねない言葉。
それで見せ掛けすら冷静を保つ事が出来なくなったようで。

「じゃあ、どうすれば良かったのよ!?昔の事で、現在の私の気持ち否定されて!」

ヒステリックな言葉と共に、勢いよくこっちに向かってくる。
胸元を掴まれて、力任せに引き寄せられた。

振り払う事も出来たけど、それをやらなかったのは…。

「私は、アンタが好きなんだよ!そんな相手に、過去の未練を誤解されたくなんか、ない!」

彼女の眼が、僕だけを映していたから。

僕がいくら欲しても手に入れる事が出来なかった、りらの瞳と同じものが、僕の為に、ここにある。

突き放してしまったら、この眼が逸れて、違うものが映されてしまう。

いつまでも、この瞳だけは自分のものにしておきたくて、彼女の顔に触れる。
親指で目尻を拭うと、自分の状況に気付いたのか、恥ずかしげに視線が逸らされた。
/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp