第16章 複雑に絡む
‐黒尾side‐
この、朝まで続きそうな飲み会から、上手く逃げる口実を作ったもんだ。
面倒と思ってる相手を送るなんて、通常だったら頼まれてもやらないヤツなのによ。
2人を見送るように眺めた扉から、視線を戻そうと顔を動かすと、途中でりらの眼に掴まった。
真っ直ぐ俺を見るその瞳は、さっき止めていた質問を再開するだろう意思を持っている。
「りらは、どこまで知ってんだ?」
「きとりちゃんが転勤になって、私があの家に入って、りんサンが転職を考えた話までです。」
「ほぼ知ってんじゃねぇか。何が気になんだよ?」
「黒尾さん、りんさんを支えるの無理だと、突き放したと聞きました。だから、喧嘩別れしたのだと。」
「あぁ、そういう事な。」
何が知りたいのか、りらにとって重要なのは、どんな情報なのか。
それが分からないと、コイツとは会話がしにくい。
一から話しても良かったが、自分の持つ情報と食い違う度に突っ込んでくるだろうから、脱線しまくって話が進まない予感がする。
だから、求めている答えのみに絞って、話してやる事にした。
「俺って、真面目だろ?」
「…はぁ。」
「支えきれないとか思って、突き放しても、本当に離れるとか、すると思うか?」
「黒尾さんは、しませんね。」
「だろ?…だから、出来る限り、りんサンの傍にも居ようとしてた。」
ふざけた言葉から始めた話。
りらは、相変わらずの真顔で、真剣に聞いていた。