第16章 複雑に絡む

‐黒尾side‐

木兎の野郎が、バカだから、俺繋がりの知り合いって事しか覚えて無くて。
途中で、わざわざ席替えしてりんサンをこっちに寄越しやがった。

久々にした会話は、今の仕事が上手くいってんのか、とかの当たり障りないモンだけで。
その後は、りんサンがずっと月島に絡む様子を眺めてた。

月島が、たまに助けろとばかりに、俺に視線を向けてきてたが、それは無視し続けた。
その内に、酒の力なのか、諦めたのか、嫌々って顔をしながらも相手してやるようになって。
仕事があるから、邪険に出来ねぇのは分かるが、毒ばっか吐かないのは成長した証拠だな、なんて。
感慨深くもなってた。

そんな２人を眺めているだけで時間は過ぎて、閉店の作業をしているりら達が見える。
お開きにするか、と声を掛けようと思ったが、木兎が酔っ払って話を聞きそうにねぇ。

その上、店は終わったのに、店員であるりら達も混ざって飲むらしい。
オールになる事は覚悟したが、いつまでもりんサンの隣ってのも、何か嫌だ。

それは、向こうも同じだったようで、俺等の間にりらが呼ばれた。

「黒尾さん。聞いていいですか。」

座った途端に、昔と変わらず真っ直ぐな眼を向けてくる。

聞きたい事は分かってるが、この場で話して、月島に聞かれたらマズくね？
同居人の元カノが、職場の同僚とか、嫌だろ。
絡まれる度に、なんか気まずいだろ。

「それは、後で、な？」
「後なら話してくれますか。」

頷いて返すと、なんとか誤魔化されてくれて、安心した。