第16章 複雑に絡む
モヤモヤした状態のまま、仕事を続けて、やっとの事で閉店の時間。
木兎さん達は、まだ宴会を続けていた。
他の片付けを全て済ませて、終了を告げようと小上がりに近付く。
だけど、かおるさんに肩を叩かれて、止めるように首を振られた。
「今日は、このまま、店でご飯ね。」
視線で示されたのは、黒尾さんとりんさん。
「私も、あの2人の事、気になるもの。他の店に移動とか言ったら、帰られちゃいそうじゃない?」
「…なんで、それ、知ってるんですか。」
「りらちゃん、今日は凄く分かりやすいよ。光太郎の予約、皆とだって分かった途端に黒尾が来るか聞いてたし。りんさんが、あっちの席に行くの嫌がったじゃない?
だから、2人を会わせたくないんじゃないかなーって。なんか、あるんでしょ?」
至極楽しげな顔をしている。
私よりは、話を聞き出すのも上手いだろうし、止めても無駄だろうし。
従って、ここで食事をする事にした。
飲み物を準備して、小上がりへ。
かおるさんは、当たり前のように木兎さんの隣に行ったけど、私はどこに座れば良いのやら。
空いている場所を探そうと見回していると、りんさんが手招きしていた。
「取り合えず、ここ、座ったら?」
自分の隣のスペースを空けるように、少し場所をずれてくれる。
でも、その位置だけは座りたくない。
だって、反対隣は黒尾さん。
そこ、完全に拷問です。
そんな事を思っても、口に出して拒否なんか出来る訳は無い。
諦めの息を吐き出して、空けてくれたスペースに腰を下ろした。