第16章 複雑に絡む
黒尾さんと、気まずい空気にはならなかったのには安心したけど。
まさか、月島くんが顔を見るなり文句を言い始めるなんて思いもせず。
それに、りんさんが応戦してしまったから、ヒートアップしそうで。
店の中で喧嘩とか、他の客の目もあるから止めて頂きたい。
笑顔で威嚇をすると、月島くんの方が分かってくれたから、言い合いは終息して。
頼まれた飲み物を持っていった頃には、重い空気は無くなっている。
「…驚かなかったんですか。」
グラスをテーブルに置いた時、黒尾さんと目が合って、黙って視線を外すのも変だから、気になった事を聞いてみる。
「お前、りんサンと俺の関係、知ってんだ?」
「本人から聞いたので。」
「…木兎が、先にメッセージくれてたからな。…気まずいっちゃ気まずいが、お互いにイイ大人だし、人前でそんな空気出さねぇよ。」
木兎さんが、空気を読んだのか。
珍しい事もあるものだと、感心していたけど。
「それに、喧嘩別れした訳じゃねぇからな。」
「…え。」
この発言に、今度は驚いて、つい声を上げてしまう。
私が聞いた限りでは、結局1番になれなかったりんさんって部分で終わっていて。
それなら、きとりちゃんを理由に喧嘩でもして、別れたのだと思い込んでいた。
「お前、聞いてんじゃねぇの?」
「…多分、途中までしか聞いてないです。」
円満に別れたのなら、私の中の情報では足りない。
知りたいけど、一応は手伝い名目の仕事中で。
ここにばかり居る訳にはいかず、悔しさを覚えながら、その場から離れた。