第16章 複雑に絡む
‐黒尾side‐
木兎から先に連絡が来てたから、彼女が居た事に驚きはなかった。
月島と彼女が知り合いらしい喋り方をするのは気になっても、元カノの現在に、深く突っ込む気はない。
だが…。
「会社の同僚が、プライベートに入り込んで、気分が良い人間って居ます?それで、ヤキモチとか。自意識過剰ですね。」
「居なくはないんじゃないかしら?普通に同僚と飲みとか行ってる人も、存在する訳だし。」
「じゃあ、僕が異常なんですね。僕は公私を分けたいんで、同僚とプライベートでお付き合いしたいと思えマセン。」
「私もそうだけど、このお店気に入ったし。勝手に同席したんじゃなくて、光ちゃんが誘ってくれたから居るだけなんだけど?」
聞かずとも、2人の会話で大体の事は理解出来た。
たまに月島が、休み時間にやたら絡んでくる面倒な先輩が居るって話してたが…。
この反応は、確実にそれがりんサンだな。
このまま、やり合わせ続けたら、どっちか帰っちまいそうだ。
その展開は避けねぇと、りらがガチでキレる。
知り合い枠の俺等が、店で問題起こすと厳しいからな、アイツ。
ニコニコ笑って、怒ってますオーラ出してくるに決まってんだよ。
「…お話し中すみませんが。黒尾さん、月島くん。お飲物伺って宜しいでしょうか?」
いや、もうすでに怒ってたわ。
人の会話に割り込むなんて、りらは普段ならしない。
その上、注文を書き取る為のペンを持つ手が震えてやがる。
こうなると、コイツがやる事は想像がつく。
「…僕、取り合えずビールで。」
「俺も。」
月島も、それには気付いたようで。
地味に嫌がらせが出来るサワー系の注文を避けていた。