第16章 複雑に絡む
‐りんside‐
光ちゃんが、ダチしか来ないって言っていたし。
光ちゃんもそうだけど、みつの彼氏…赤葦くんも、鉄朗が住んでたシェアハウスの人間だし。
来るのは、予想がついていた。
分かっていて、同席の誘いを受けたのは会いたかったから。
純粋に、今の鉄朗を見たかったから。
懐かしさも、あっての事だった。
さっき、りらに思い出話なんかしたから、そっちばかり考えていて。
すっかり抜け落ちていた、大事なこと。
「…この店、教えた身なので来るなとは言いませんけど。なんで、相席してるんですか?
独り飲みが淋しいからって僕の知り合いに絡まないで貰えません?」
それは、月島くんも、そのシェアハウスの住人だったってこと。
私を見るなり、不快感丸出しの顔で、刺々しい言葉が降ってきた。
「月島、会った途端に威嚇すんな。…つか、お前とりんサンって、どんな知り合いよ?」
「僕は、黒尾さんが、この人を名前で呼ぶような仲って部分が気になるんですケド?」
鉄朗が宥めてくれたお陰で、私への攻撃は止めてくれる。
ただ、都合の悪い状況は変わっていない。
月島くんの前で、私と鉄朗の関係を言いたくは無かった。
「…取り合えず、座って貰えませんか。通り道に、大きな方が2人も立ち止まっていると邪魔なので。」
一旦話を止める形で、りらが助けてくれたけど。
「…で?黒尾さんとは、どういう関係なんですか?」
中々言わないだろう鉄朗から、標的が私に移ってきてしまう。
「…そんなに私と鉄朗の関係が気になるの?ヤキモチ妬かないでよ。」
どう答えるべきか分からず、誤魔化そうとふざけた言葉が口から出て。
完全に怒らせたのか、眉間に深い皺が刻まれていた。