第16章 複雑に絡む
‐みつside‐
私が追い出された後、姉ちゃんには何かを話したようだ。
だって、あの感情の掴みにくい鉄仮面が外れて、分かりやすいくらい焦った顔をしている。
あの、写真だけで想像がついたテツローくんとの関係。
多分だけど、付き合ってた。
元カレと、現在好きな人が、同時に現れた時のこの人の反応が楽しみだ。
「お前、顔が気持ち悪い。」
「京治は、相変わらず私には口が悪いね。」
「俺、他の人に対しても口が良いつもりないけど?」
「ソーデスネ。」
顔がニヤけてしまったみたいで、隣から突っ込まれた。
でも、今は京治に何を言われようと、私にはお楽しみが待っているから、嫌な顔にはならない。
結構すぐに感情を剥き出しにする人だから、面白い事になるのは間違いないだろう。
慌てるかな。
困るかな。
感情の行き場を無くして、この前みたいに泣いちゃったりして。
これからの反応を思い描いて、りんサンを眺めた。
「そういえば、光ちゃんは、ココの女将さんと付き合ってるんだって?」
「女将サンじゃねーよ。かおるちゃんは、その娘だ。今、女将サン入院してて店に出てねーだけだって。」
「そうなの?お若い方だと思ってたけど、そんな事情があったのね。」
すぐ先の事態を知らない彼女は、ぼっくんと軽い雑談を交わしている。
2人の会話を聞いて時間を潰していると、店の扉が開いた音がして。
連れを待っている、この席の面々は揃ってそちらを向いた。